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ONU ~見エナイ門~

※チラシをクリックすると拡大したものが見られます。
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ONU 表 ONU 裏
舞台写真は下記をクリックしてご覧ください(撮影/丸山毅)
2012年8月25日
2012年8月26日(1)
2012年8月26日(2)

舞台概要

人はさまよい 見失い 大地を刻み 掘り返し
あるのに見えない 疾風(ハヤテ)の光
あるのに見えない 鈴生(スズナ)りの闇
鈴名里(スズナリ)の つらなる闇の 最果てに
幾千万のスバル星(ボシ) 疾風のごとく煌めいて
ここにある 本物の思い そこにある
思いがつなぐ 宇宙(ソラ)と大地
ここはカオス 宇宙(ソラ)の果てよ―

“本物の思い”… 人を 生き物を 大地を 救う 希望の光―

~あらすじ~
この作品は、ヒモロギの木という御神木(ゴシンボク)があるアカガネ山のお話。
アカガネ山は銅鉱山でもあり、大勢の人々が坑夫として働いている。鉱山主の蛮甲(バンコウ)・砂羅(ジャラ)夫妻は、坑夫たちを家族のように大切にしている。また、坑夫たちも仲間意識が強く、お互いに支え合いながら元気に働いている。
一方、オヌ(人間界とは異なる異界に生きるモノ)たちは、ヒモロギの木を通って、人間界と異界を往来し、風を起こして人間たちにいたずらすることが楽しみの一つだが、大地や水が汚れるとヒモロギの木が枯れ、人間界への門が閉ざされてしまうことになる。地球を壊している人間たちに対して、漠然とした不安を抱えるオヌたち。折しも、ある出来事から迫り来る危機を悟った水天/ミクマリが、オヌたちにヒモロギの木を守るための難題を持ちかける。その難題をクリアすべく人間界に行くことになった疾風(ハヤテ)は、人間の生活習慣や感情の変化に戸惑いつつも、アカガネ山の坑夫の一員となって、徐々に人間界になじんでいく。
両親を亡くし坑夫として働く鈴名里(スズナリ)は、亡き母の手紙により、アカガネ(鉄)の採掘が原因で山の水に毒が混じり始めていると確信する。ハヤテは、鈴名里の母の手紙を読み、これを公表することで、アカガネ山を鉱毒から守れるかもしれないと思い、鈴名里に近付き、一日も早く手紙を坑夫たちに公表するよう説得を試みるが、鈴名里は、鉱山主の蛮甲・砂羅夫妻への恩と、蛮甲夫妻に絶大なる信頼を持つ仲間たちの心の内を考えると、蛮甲を裏切ることになりかねない手紙の内容を公表する勇気を持てず、一ヶ月の時が過ぎた。ようやく鈴名里が決意して、母の命の叫びとも言える手紙を公表したところ、仲間たちは、蛮甲への疑いを持ち始める。鈴名里とハヤテ、そして坑夫たちは、真偽を確かめるべく蛮甲に詰め寄るが、蛮甲の説得力のある心のこもった言葉を耳にして、坑夫たちは疑いを持つことをやめてしまう。ハヤテは、考えがコロコロ変化する鈴名里や仲間の心を理解できず激怒するが、鈴名里から“本物の思い”という人間が持つ尊い心の存在を聞き、自らもいつの間にか“本物の思い”を抱き始めていることを知る。そして―

ミクマリの出した難題とは?
ハヤテは難題をクリアできるのか?
ハヤテと鈴名里、そして坑夫たちの行く末は?!

キャスト

青木 賢治 / 岩間 健児
坂西 佑香 / 町田 尚規 / 村松 沙理亜 / 佐藤 真也 / 古畑 美貴 / 山本 舞 / 石田 美優 / 笠原 のあ / 小林美帆 / 中村 陽香 / 菊池 侑希 / 白井 亜弥 / 白井 亜実
池田 渉 / 伊藤 舞香 / 上野 葉子 / 小田切 桂一 / 加藤 亜紀歩 / 久保田 夏実 / 小嶋 あけ美 / 篠原 弘美 / 篠原 遥香 / 田中 誠 / 塚田 聡志 / 月岡 俊 / 月原 康智 / 中澤 優希 / 永田 留美子 / 新津 正雄 / 萩原 優花 / 古川 祐利 / 堀﨑 優季 / 宮本 真里 / 村田 竜次 / 村松 沙羅 / 山崎到子
~特別出演~
松本 恭子 (劇団くるま座) / 窪田 裕子 (劇団くるま座) / クランシー京子 / 坂本 真由美
【ダンサー】 青木 淳一 / 前田 奈美甫

スタッフ

脚本・演出 青木 由里 (日本演出者協会会員)
作曲・声楽指導 森 雄太
生演奏隊 笛:後藤 剛史 / パーカッション:波田野 岳彦 / ヴァイオリン:牧美花 / シンセサイザー:森雄太
声楽隊 和田 久美 / 宮澤 美幸 / 金田 光季 / 海瀬 理菜 / 塩原 杏子 / 倉石 嘉奈子 / 森 雄太
ダンス振付 青木 淳一
衣装 北村 幸子
照明・音響 株式会社 長野三光
広報印刷物製作 第一企画株式会社
大道具・小道具・広報 NPO法人 劇空間夢幻工房
演出補助 田中 園枝
制作 塚田 健太郎

助成

芸術文化振興基金助成事業

後援

長野県教育委員会 / 長野市教育委員会 / 信濃毎日新聞社 / 毎日新聞長野支局 / 朝日新聞長野総局 / 読売新聞長野支局 / 週刊長野新聞社 / 長野市民新聞社 / SBC信越放送 / NBS長野放送 / TSBテレビ信州 / abn長野朝日放送 / INC長野ケーブルテレビ / FM長野 / FMぜんこうじ

作品の背景

当初、2004年に上演した「DREAM~ラムネの泡はヤマタノオロチ~」の再演を考えていましたが、再考した結果、全く別の作品に生まれ変わりました。「DREAM」は、イオウ鉱山の鉱毒問題を核に創作した作品。今回は環境問題を背景に置き、人間が織り成すドラマを核にしたいと思い、本を読み漁りネット鉱山に纏わるエピソードを懸命に探しました。そして、ようやく出会えたのが「ファールン鉱山事件」でした。

【ファールン鉱山事件】
一七二〇年、鉱山の町として有名なスウェーデンのファールンで、若い鉱夫の死体が発見された。それは一六七〇年に生き埋めになった若者で、彼のかつての婚約者がその身元を確認したという。この事件は以下のように報道された。
ほぼ四十年間利用されないままになっていた銅山の採鉱堀を測量し修理する際、落盤跡のある採鉱堀で一人の人間が発見された。その衣服は保たれていた。しかし短刀など鉄製のものはさびていた。しかし死者は、完全に保たれており変化していなかった。医学部はこの遺体を欲したが、一人の老婦人が名のり出て、この死者は自分と婚約していたのだと主張した。医学部は、この女性からその遺体を買い取って検査することになるかもしれないというのも、この引き出されたばかりの遺体を取り囲んで、人々がこの見知らぬ若々しい顔の特徴を観察しつつ見守っていると、杖をついた白髪のおばあさんが一人現れて、涙を浮かべてこの愛する死者に屈みこんだ。この死者は、彼女の許婚だったという。墓場の門に近づいた自分に残された時間の中で、なおこうした再会が恵まれたことを祝福しつつ、彼女は倒れ込んだ。そうして人々は、感動をもって世にも珍しいこの二人の再合一を見つめたのだった。そのうちの一人は、死して深い溝の中で若々しい外貌を保ち続け、もう一人の方は、体が年老いてしわがれていきながらも、若き日の愛を変わらず忠実に保ち続けたのだった。そしてまるで五十年目の銀婚式のように、まだ若々しいが動かず冷たくなった花婿と、年老いて白髪となったが温かい愛に満ちあふれた花嫁が見出されたのだった。
▽自然科学者 G・H・シューベルトシューベルトの報告
落盤で生き埋めになったものの、緑礬水に浸されて美しいままに保たれていた若い鉱夫の屍体が、五十年後発見され、ひとりの老婆によって、かつての自分の花婿だったと認められた。

変わらぬ思いを持ち続け、再び会えると信じて数十年間待ち続け、ついに再会を果たした恋人同士の劇的なる瞬間…このエピソードに出会った時、思わず「これだ!」と叫んだことを覚えています。この生死を超えたドラマ「ファールン鉱山事件」をモチーフにして「ONU」は誕生しました。

【本物の思い】
人間は誰でも「思い」を持っています。しかし、縁に触れて変化するのが常です。
一昨年、宮澤賢治さんの「銀河鉄道の夜」を元に舞台化をして以来、「ほんとうのさいわい」という言葉がずっと頭から離れず、人間にとって本当の幸いって何だろう?と考え続けて来ました。人は、地球・自然・食物・水・あらゆる生物・コミュニティの中で生きています。私たちは、宇宙の循環の中に存在しているのですよね。大勢の人々が、宇宙の営みを想像し感じる感性を持ち、自然・生き物・他者に対して変わらぬ「本物の思い」を抱いた時、良い循環が生まれるのではないかと私は思っています。
「本当の思い」ではなく「本物の思い」とした理由は、行動を伴う“思い”という位置付けにしたかったから。思っているだけでは何も変わりません。変わらぬ思いを持ち勇気を持って行動することが、良い循環を生み出す一筋の光だと私は考えます。そして、良い循環の中で生きることが人間にとっての「ほんとうのさいわい」なのではないかと…

【ONUについて】
「ONU」は「オヌ」と読みます。
「鬼(おに)」はおぬ(隠)が転じたもので、元来は姿の見えないもの、この世ならざるものであることを意味したそうです。
この作品では、「見えない存在=オヌ」として描きました。

物質至上主義に傾き経済大国となった日本ですが、今は足元が揺らぎ始め、新たなる道の選択を迫られています。
目に見えないモノを感じる感性と想像力…これらの欠如が、現代社会における諸問題の根本原因ではないかと私は考えています。人間も、大地も水も空気も、あらゆる生命体も、全て宇宙の循環の中で存在しています。宇宙に思いを馳せ、人間が持つ豊かな想像力と感性をフルに発揮して考えていけば、人類が選択すべき新たな道を発見できるのではないかと…
今回の作品は、東北大震災と原発問題等を通じて人間にとって真に必要なものは何かを考えざるを得ない状況が続いている今の日本の現状を踏まえ、「自然破壊」を背景に、人間が持ち得る「本物の思い」に一筋の希望を抱いて創作しました。

漆黒の闇が広がる野外舞台で繰り広げられる音楽・ダンス・歌・芝居のコラボレーション。今年は、群衆の身体表も見どころの一つです。壮大な夢幻パラレルワールドを、ごゆっくりご堪能ください。

【参考文献】
『ギルガメシュ叙事詩・イシュタルの冥界下り』
矢島文夫 訳 ちくま学芸文庫
『ギルガメシュ王ものがたり』 ルドミラ・ゼーマン文/絵 岩波書店『ドイツ幻想小説傑作集』 種村季弘 編 白水Uブックス
『ホフマン全集 3 夜景作品集』 創土社
『ホフマン短篇集』 E・T・Aホフマン 岩波文庫
『ホーフマン・スタール選集 詩・韻文劇』 河出書房新社
『ザントマン』 E・T・A・ホフマン 東洋文化社
『アンコール・ワット 旅の雑学ノート 森と数の神話世界』 樋口英夫 ダイヤモンド社
『星座で読み解く日本神話』 勝俣隆 大修館書店
『民話・笑話にみる 正直者と知恵者』 西田知己 研成社
『入門・足尾鉱毒事件』広瀬武 随想社
『闇を掘る女たち』 林えいだい 明石書店
『エンデ全集 サーカス物語・ゴッゴローリ伝説』 岩波書店
『ハーメルンの死の舞踏』 ミヒャエル・エンデ 朝日新聞社
『だれでもない庭』 ミヒャエル・エンデ 岩波書店
『エンデのメモ箱』 ミヒャエル・エンデ 岩波書店
『須高 第72号』 須高郷土史研究会
『須高 第71号』 須高郷土史研究会
『電信柱のある宇宙』 別役実 白水社
『十一人の少年』 北村想 白水社
『天守物語』 泉鏡花 青空文庫
◆インターネットより
・ファールン鉱山事件
・インディアンの言葉(ホピの予言)
・ホピ族の長老トマス・バニヤッカの予言
・田中正造と天皇直訴事件
・山の神・足尾銅山
・妖怪・妖精
・鉱物の名称
他多数


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